「手のかかるヤツが、世話のかかるヤツのお守りをしているだけだろう。」
屋根の上でのファインダーからの連絡待ち。体は目的方向へ向けたまま、同じく目的を睨んでいる神田に、暇つぶしに飽きたラビがふった話題。
最近のアレン・ウォーカー
この会話が成り立つまでには、東京ウォーカーから教団ウォーカーなど怪しげな前振りを頭の記録から引っ張り出しすというラビの多大な努力が払われた。
「アレンは、頑固なところもあって手がかかることもあるけど‥」
「神田ってアレン君に手をかけてるんだね。」
少し後方で、目的へ向いたままで言い切ったリナリーに、神田は目的に向けていた顔を、ゆっくりとリナリーへ向けた。瞳が細まる。
「あ〜、ミランダはどして?≠チて思うぐらい自分で穴掘るけど、な〜んか憎めないさ」
冷えてくる空気に、ラビは体ごと仲間を振り返った。
家族という割りに殺伐とした会話さ
あ、家族だから遠慮が無いのか
納得したラビの耳に更なる爆弾発言が飛び込んでくる。
「もっと言えば神田は今までなら他人を気にも留めなかったけど、ミランダには気付いてるんだね。」
「え〜、でもユウはミランダの事、無視してるさ?」
 抜 刀   自己満足
爆弾よりも納得できなくて、ラビは突っ込んだ。
「無視できるって事は、意識してるって事よ。」
リナリーの冷静な判断は、若くてもこれまでの経験の厳しさを物語っている。反して、以外に若気がある神田は、チャリと音を響かせて六幻の刃を覗かせた。
「ユウ、これから仕事なんだから力は温存しとくさ?」
神田を怖がる振りをしながら、ラビはにっこり笑った。
そこへ
「世話をしちゃいけませんか?」
渦中の自分から声が上がる。
「あ?」
「アレン?」
神田の気が反れたのはいいが爆弾には代わりが無く、ラビは頭をかいた。
「一生懸命じゃないですか。」
顔を膝に埋めたまま、アレンは返した。
「他人の手を借りなければならないヤツは必要ない。死ぬだけだ。」
「だから!死なないように手を貸してもいいでしょう。一緒に成長していけばいい。」
「相変わらず学ばないヤツだな。あの女が成長するとでも?もういい歳だろうに、日常的な自分の面倒すら見れないのはどうだ?どうみても、あのドジさが治るとは思えんな。結果の出ない努力など無駄なだけだ!」
「∞で弟君もそういったそうですが、僕はそうは思いません。その人の目指すところに届かなくても、その人の姿勢で救われる人がいれば、無駄なんかじゃありません!」
「救われる?ここでは低レベルなおままごとは通らないぜ。」
キツイ応酬でも、いまだアレンは顔を上げていなかった。
「ミランダさんはいつも一生懸命で、、、なんにでも一生懸命だから、、、僕は救われてます。アクマと闘い、、、縛られた魂の叫びを見て、、、ノアの一族が人間だって、僕は頑張れるんです。」
                               日常
ミランダのまわりには、ふと微笑える日常がある。それを守る為に、闘うのだ。
「‥バカバカしい。」
「おお、ユウが折れたさ。」
会話を打ち切ったと口笛吹くラビを、神田は睨んだが口を開きはしなかった。
「世話って言えばアレン君、ミランダの手料理を食べたの?」
この間、ミランダが作るって張り切っていたけど
「いいえ‥」
アレンの脳裏に楽しいはずの1日が甦る。

調理場に椅子を持ち込んでアレンを座らせると、ランチョンマットに一輪挿しを飾り、ミランダはエプロン姿で食材と向き合った。
【決まりどおり作ろうとするから失敗するんですよ。ミランダさんの思うように作ってみてください。】
不安げな表情にアレンが勇気付けると、独り暮らしだったミランダも料理ができないわけではないので
【それじゃあ】
意気揚々と取り掛かった。
【♪♪♪‥あっ】
【どうしました?】
始まって間もないうちに上がった悲鳴、アレンはミランダの手元を覗きこんだ。
【塩と砂糖を間違えて】
【怪我をしなければ良いんですよ。】
【でも‥】
【大丈夫ですって。】
アレンスマイルにミランダにも笑顔が戻る。
【そう‥そうよね。些細な事と思えば。】
些細な事じゃありませんけど
内心訂正しながらも、アレンは楽しそうなミランダに大人しく座って、その後姿を眺めた。
【n♭‥♪〜‥きゃ】
悲鳴とともに煙が上がる。
【大丈夫ですか?】
【わたしは大丈夫だけど、、、吹きこぼれてしまって‥】
アレンはレンジを覗いてそっと息をつくと、火力を弱めた。
【火が強すぎますよ。弱火でコトコト煮ればまだ大丈夫です。】
【そうね。よし、頑張るわ。】
コトコト という音は耳障りがいい。ずっと食事を作ってきた側のアレンは、口元を緩めてテーブルに懐きながらミランダを眺め‥眺め‥
【‥‥ミランダさん?】
【なぁに?アレン君。】
【なに、、、作ってるんでしたっけ?】
さすがに料理の動作に不安を覚え、アレンは席を立った。
【それはね。】
ミランダは味見をすると
【なに、作るんでしたっけ?】
涙目でアレンを見返した。
【‥そこからできるものに変えましょう。臨機応変もいいもんですから】


「で、ミランダの手料理は結局アレンの手料理になったんだよな。」
事の次第をフェリーから聞いていたラビが、両手を広げて見せた。
「モヤシはモヤシでしかないな。」
馬鹿は死んでも馬鹿だという神田に、アレンは薄く笑った。
「師匠の口に合うように料理をしていた時でも、美味しいなんて思いもしませんでした。でも、ミランダさんと作ったご飯は、美味しかったですよ。自分で作ったものが‥。」
アレンは少し膝から顔を上げた。
「ミランダさんのご飯が食べられなくても、一生懸命作ってる姿は見てるだけで楽しかった。それ以上なんてありませんよ、きっと。」
「あら、あると思うけど。」
ミランダと過ごした1日を噛み締めているアレンは、そうですか≠ニ笑って生返事をした。
「ミランダって指に傷いっぱいつくるけど、裁縫は丁寧なのよ。ほら?」
そう言ってリナリーは団服の袖を引っ張った。
「え?」
「料理だって凝ったものじゃなくて、目玉焼きとかサンドイッチは美味しいさ?」
「ラビ‥食べた事あるんですか?」
顔を上げたアレンは、自分を見下ろす神田と視線があう。
「三角じゃない握り飯は、握力不足で米と空気の混ざり具合が丁度良かったな。」
「か、神田までぇ〜?」
ガバッと立ち上がったアレンの右手が発動し始める。
「はぁ〜い、そこまでそこまで〜。」
割って入ったのは教団にいるはずのコムイ。屋根の上にいる4人に向き合う為、コムイ4の巨大な頭に乗っかっている。
「兄さん?」
「いや〜、良い画が撮れたよ。」
「良い画って?」
「イノセンスはどこだ?仕事じゃなかったのか?」
「え〜?仕事だよ〜!?ほらぁ、最近人手不足でぇ、勧誘のさぁ、ポスタ〜ぁ?」
コムイがリモコンを押すと、コムイ4の口からにょ〜と紙が出てきた。
月をバックに一方向を見つめるエクソシスト達は美しく、君たちの力が必要です≠フキャッチフレーズが浮いていた。
「って、自衛隊かよっ」
「黒の教団って、極秘じゃなかったんですか〜?」
「ちちちっ」
アレンの悲鳴に、コムイは指をふった。
「黒の教団とは書いてないっしょ?それにほら、こゆ〜のもあるよ。」
しないされないアクマには≠フフレーズは科学班の面々が、この顔見たら連絡を≠フフレーズにはファインダーの面々がポーズをつけていた。
「ね、こういうのと一緒に張ればなんかの仮装と思われ」
「‥抜刀。」
「イノセンス、発動‥」

エクソシストの売り手市場は続くようだった。

今宵屋根

DVDが3巻なので1期のEDだったり‥えへ?
ちったぁ文がマシになってればと願うばかりです(汗)2008/1/11